シルクスクリーンだと思われる方もいたりする山本直輝のフラット11。
平坦に塗り込めたアクリル絵具の明るい色彩で、身体が欠損・破裂したり
バラバラになりそうになりながらも、個を保とうとする人物が描かれています。
僕は、古来から人々が災厄に対抗するための呪術で用いられる仮面を、
血肉の入り交じった人体のパーツで表現する彼のコンセプトが
とても気に入っています。
この身体が分解されていく様子は、もちろん存在という概念上で
起こっている事はいえ、外的な脅威に対して自らの身体を引きずり出して
対抗するという所に、生命体としてあるべき姿のような印象をうけるんです。
彼の作品に必ずと言っていいほど出てくる、剥き出された歯も、
一番原始的で強力な武器である事にちがいはありません。
ところで、無限の住人という漫画はご存知でしょうか。
SF時代劇のような漫画なのですが、敵の中に尸良という男が出てきます。
彼は戦闘で右手を失っても、その腕の骨を削りだして武器に仕立て上げて
更に強力になって戻ってくるんです。
マニアックな話で申し訳ないですが、その身体そのものを改変してまで
立ち向かってくるという所に妙に心が惹かれるのです。
特定の脅威に対して進化した動植物には興味深い種が多いですが
道具を持ってして脅威と対峙してきた人間がそうなっていたら、という
好奇心をも満たしてくれる作品でもあるのかもしれません。