今アルマスでは中谷日出子展を開催しています。

今東京ではとても雨が降っていますが、
 そんな湿った気分とは無縁の明るい色彩の世界が広がっています。
具体的な形態は登場せず、地の水色は空のようであり、
 その下に配置されたもう少し濃い水色は山の斜面のように見えたり
 鑑賞する人により様々な解釈の可能性が広がっています。
“なるべく考えないで描く”ということを非常に意識(矛盾するようですが)していて、
 色、筆運びは心の流れに任せられています。
 美術において自我をなくす事の可否についての議論は様々にありますが、
 少なくとも作家の目指すところはそこにあります。
その結果あらわれた画面は、全体を見渡すとやはり風景を彷彿とさせるのですが
 ただ明快な形態や事象は描かれていません。
鑑賞する側の目は、つねに手がかりとなるカタチやキッカケを求めていて、
 ひとたび、”らしい”カタチを見つけると自分の経験のストックからそれに近いものを
 あてがって、目の前にある絵を解明しようとします。
そこですべて観る人に任せてしまうのではなく、作家自身も
 観る人と一緒になって何が描かれているのか話していたりするのを
 見ていると、目に見えるということは面白いなと思います。